妊孕性温存ができなかった方

男性の患者さんへ

 男性の生殖機能は年齢、受けたがんの治療の種類や部位など、様々な因子により影響されます。治療の影響がどの様にご自身の生殖機能に影響するかを理解することが大切です。

1)男性の生殖機能

 男性の生殖機能(精子をつくる力や勃起などの性機能)は、脳の中のホルモン中枢である視床下部や下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンでコントロールされています。思春期以降、陰嚢内の精巣にある、男性ホルモンを作るライディヒ細胞と精子の元となる胚細胞に作用して、精子の生成に働きます。またこれらのホルモンは精子の生成だけではなく、思春期の心身両面の成長や声変わりなど様々な働きをし、男性らしくなり生殖機能を獲得します。

2)がん治療の影響

 脳や精巣への放射線治療や抗がん剤などのがん治療は、脳からの性腺刺激ホルモン分泌を抑制、また直接精巣での精子の造成機能に影響を及ぼし、性機能や精子のクオリティー(精子数や運動率)を低下させます。つまり、不妊の原因になります。また、思春期前の10代の男の子では、重要な男性ホルモンの一つであるテストステロンが分泌低下するため、思春期発育に影響することもあります。しかしこれらは、ホルモン補充などのサポートの治療で補うことができます。成人でも筋肉や骨の状態を保つため、また勃起などの性機能を維持するためにも適正な男性ホルモン量を保つことが重要です。

3)どの様に観察すべきか

問診:抗がん剤や放射線などの性腺機能に影響のある治療を受けた人は、主治医とその影響についてよく相談し、フォローアップとして定期的な検査を受けましょう。思春期の前に治療を受けた場合は、身長や性器の発達、声変わりなどの観察も重要です。

血液検査:必要な男性ホルモンが産生されているか、血液検査で簡単に調べることができます。

精液検査:精巣の機能は、精液検査で、精子の数や運動率を調べることができます。正常の所見であれば、自然妊娠が可能です。精子を作る力は、がんの治療後、数か月もしくは数年かかって回復することもあります。もし、精子の数や運動率が悪ければ、少し間を開けて再検査してください。

4)どんな治療があるのか

 男性ホルモンが産生不足の方は、ホルモン補充治療を受ける必要があります。内服や注射など色々な薬があるので、専門医に相談してください。ホルモン補充により、性機能の改善や精子をつくる能力の回復が期待できます。また、精子の数や運動率が低い場合は、人工受精や顕微授精などの生殖補助医療での妊娠を目指すことが有効です。どの様な選択肢があるか生殖医に相談しましょう。両側の精巣の摘出をした男性は精子を作ることができません。またある種の化学療法や放射線治療や年齢により、造精能が回復しないことがあります。妊娠に関係しなくても、ホルモンの影響は健康な身体の維持に必要です。もし問題があれば、主治医や泌尿器科、生殖内分泌科医に相談しましょう。

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