早期発見さらには手術,放射線治療および化学療法等の集学的治療の進歩により乳癌治療成績の向上が認められ死亡率が改善している。この中で,術後放射線治療は温存乳房や所属リンパ節における遺残がん細胞を死滅させることを目的に施行される。本FQでは術後放射線治療中の採卵は安全かについて解説する。
標準的な全乳房放射線治療で乳房に照射される50 Gyのうち,2.1~7.6 cGyが内部散乱によって子宮に到達する。この線量は,早発卵巣不全(primary ovarian insufficiency;POI)を誘発したり子宮に有害な影響を及ぼしたりするのに必要な線量より少ない1)2)。
全乳房放射線治療における骨盤への,低線量ではあるが検出可能な放射線のために,採卵は術後放射線治療が完了した後に行うことが推奨される3)4)。
ESMOガイドラインによれば,妊娠中の放射線治療は低線量でも小児がんや児の不妊症発症の原因となる可能性がある。したがって,緊急性を要し照射部位が子宮から十分に離れている場合を除いて,放射線治療は産後に延期することが好ましい。