里親・養子縁組支援委員会


はじめに

 女性の社会進出によって晩婚化や晩産化が多くなり、不妊に悩む方々が増えました。国内で不妊の検査や治療の経験がある夫婦は、5.5組に1組の割合に上り、2019年には約14人に1人が生殖医療によって生まれています。しかし、すべての患者さんが赤ちゃんを授かるわけではありません。中には諦めるという辛い選択をしなければならない場合があり、そうした患者さんの心の痛みは計り知れないと感じています。

 一方で世の中には諸事情により、実の親と暮らせないお子さんがいます。特別養子縁組制度・里親制度はそうしたお子さんが家庭的な環境の中で、愛情を受けながら育てられるための制度です。里親制度と不妊治療、この一見違う世界に思える2つに共通するものは、家族をつくる、という思いにあります。家族をつくる、これは人間にとって永遠のテーマと言えるでしょう。患者さんが不妊治療を開始する時、また治療に行き詰まった時、こうした制度を通じて家族の在り方を一緒に考えて見たいと思っています。

里親・養子縁組支援委員会
代表 杉本公平
(獨協医科大学埼玉医療センターリプロダクションセンター 教授)


里親・養子縁組制度について

 里親・養子縁組制度は、実の親と一緒に暮らすことのできない子どもを健やかに育てるための制度です。子育てには体力が必要とされるため、あっせん団体によって健康や年齢など養親の適性が判断されます。がんを体験された方が特別養子縁組を行う、里親になることについては、健康状態をどのように評価するか、といった点が課題になる場合があります。

しかし、がんを経験しているからといって里親や養親になれないわけではありません。埼玉県里親会の会員375組を対象に2019年に実施された調査結果では、回答者(205組)のうち12組(5.9%)が、里親・養親になる前に両親のどちらかががんを経験していたと報告されています。この制度をさらに進めるためには、がんを体験された方の健康状態について、健康診断書や意見書で何を確認すべきか具体的に検討する必要があるでしょう。

 普通の家族でも「親が病気で亡くなる」「介護が必要になる」といったことが起こります。また、欧米では小中学校のクラスに何人も養子縁組をしている子どもがいたり、生まれたときの国籍が親とは異なる子どももいたりすることが珍しくありません。それが現代の家族の特徴であり、今、そうしたことを含めて、家族の在り方を深く考える時にきています。


表

※ご不明な点などございましたら、日本がん・生殖医療学会までお問合せください。



活動報告

市民公開講座「がん・生殖医療と里親・養子縁組」

市民公開講座
チラシダウンロード

【現地開催】

  • 日時: 2023年2月25日(土)16:10~17:50
  • 会場: 大宮ソニックシティホール「小ホール」 (入場無料)


≫過去(2020年第10回学術集会)の動画はこちら


資材ダウンロード

リーフレット

里親養子縁組リーフレット
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血縁にかかわらず家族をつくる里親制度・養子縁組制度を紹介しています。



関連情報

特別養子縁組制度・里親制度に関するリンク
相談窓口及び民間あっせん機関一覧
その他、行政の不妊治療に関する取り組みについて

研究結果

総説

がん・生殖医療における里親制度・特別養子縁組制度

原著論文
  1. 「がん・生殖医療と福祉の協働」に関するアンケート調査報告 -第10回日本がん・生殖医療学会学術集会における第2回市民公開講座より-(PDF)
  2. 里親制度・特別養子縁組制度に関する情報提供の現状 ~埼玉県里親会でのアンケート調査~(PDF)
  3. A study of the criteria for young cancer survivors to become foster or adoptive parents in Japan(本邦におけるがんサバイバーに対する里親制度・特別養子縁組制度の実態調査)(英語)(PDF)
  4. 市民公開講座『「がんサバイバーと里親・特別養子縁組」家族を作るもう一つの選択肢』を開催して~アンケート結果報告と今後の展望の考察~(PDF)