小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業

はじめに

令和3年度より、厚生労働省により「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」が開始されました。この事業は、以下の2つの事業から構成されています。

A. 小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存療法のエビデンス確立を志向した研究

B. 国(と自治体)による、公的助成制度

Aの研究は、小児・AYA世代のがん患者の単治療による生殖機能低下とそれに対する妊孕性温存療法の実施における、がん等の原疾患に及ぼす影響と生殖医療における成果(アウトカム)を明らかにすることを目的とし、Bの公的助成制度は、患者の妊孕性温存治療を受ける上での経済的負担を軽減することを目的としています。



A. 小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存療法のエビデンス確立を志向した研究について

がん患者等の妊孕性温存治療

小児・AYA世代に対するがん治療は、主に卵巣、精巣等の機能に影響を及ぼすため、妊娠・出産を希望する患者はその対応策が必要になります。妊孕性温存療法には、胚(受精卵)、未受精卵子、卵巣組織、精子を採取して長期的に凍結保存する方法(妊孕性温存療法)がありますが、原疾患に対する費用に加えた高額な自費診療となるため患者にとって大きな経済的負担となります。経済的支援に関しては、独自に妊孕性温存療法の経済的支援を行う自治体が増加してはいるものの、本案件は全国共通の課題であり、自治体毎の補助の格差もあることから、国による支援が求められていました。
そこで、国は妊孕性温存療法にかかる費用負担の軽減を図りつつ、患者から臨床情報等を収集することで、妊孕性温存療法の有効性等のエビデンス創出や長期にかかる検体保存のガイドライン作成など、妊孕性温存療法の研究を促進するための事業を2021年4月から開始しました。
そして、2021年4月より、厚生労働行政推進調査事業費(がん対策推進総合研究事業)「小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存療法のエビデンス確立を志向した研究―安全性(がん側のアウトカム)と有効性(生殖側のアウトカム)の確立を目指して」の厚労科研研究班が立ち上がりました。


1. 研究の目的

2021年4月から国の研究促進事業としての経済的支援が開始されましたが、がん・生殖医療の対象が、がん患者であることから、まずはがん医療側のアウトカムとして、再発や生存の有無を管理することが重要になります。さらに、生殖医療側のアウトカムとして、妊娠・分娩に関する妊孕性温存に係るエビデンスの集積が必須となります。凍結検体の保管は長期にわたることから、二つのアウトカムに関するエビデンスが集積されることによって、安全性と有効性がより担保されたがん・生殖医療を患者に提供することができます。そこで、本研究では、がん・生殖医療における妊孕性温存療法(精子凍結保存)、未受精卵子凍結保存、胚(受精卵)凍結保存、卵巣組織凍結保存)に関するエビデンス創出を目的として、JOFR(日本がん・生殖医療登録)を管理する日本がん・生殖医療学会と連携して、小児・AYA世代がん患者等からの臨床データ等を収集する研究事業を行います。そして、将来、子どもを産み育てることを望んでいる小児・AYA世代のがん患者等が、希望を持ってがん治療に取り組めるための事業として、「妊孕性温存療法に対する費用の一部を助成し、経済的負担の軽減を図る」、「患者からの臨床データ等を収集し、妊孕性温存療法の有効性・安全性のエビデンスを創出する」、「長期にわたる検体保存のガイドラインを作成する」等、妊孕性温存療法を促進することを目的としています。


2. 研究の内容

妊孕性温存療法の有効性等の検証

  1. 収集する臨床情報等の項目
    • 事業参加時点:原疾患の診断・治療に関する項目、妊孕性温存療法に関する項目等。
    • フォローアップ時点:原疾患の転帰情報、妊娠・出産に関する項目、保存検体の保管状況に関する項目等。
  2. 臨床情報等の収集・管理
    • 定期的(年1回以上)に、妊娠・出産・検体保管状況等の情報を収集。
    • 日本がん・生殖医療登録システム(Japan Oncofertility Registry:JOFR)に入力。
  3. 主要なアウトカム
    • 妊孕性温存療法毎、保存期間毎の妊娠・出産に至る割合(有効性)
    • 妊孕性温存療法を受けた患者の原疾患治療成績、生殖補助医療の合併症(安全性)

※画像をクリックすると拡大します。


3. 研究協力施設の要件

日本産科婦人科学会妊孕性温存療法実施医療機関(検体保存機関)の施設認定要件(令和3年2月25日)には、本厚労科研研究班の研究協力施設としての要件が以下のように記されています。

「胚(受精卵)凍結保存、未受精卵子凍結保存、卵巣組織凍結保存、精子凍結保存、精巣又は精巣上体精子凍結保存を実施する施設は、厚生労働行政推進調査事業費補助金がん対策推進総合研究事業に参加することを条件とする。具体的には、妊孕性温存を実施した患者の臨床情報を日本がん・生殖医療登録システム(JOFR)に入力し、年1回以上定期的に患者をフォローアップして、原疾患の状態、並びに自然妊娠を含む妊娠・出産・検体保管状況等の情報を登録する。また、JOFR登録患者全ての情報を適宜更新し、年度末までに厚生労働行政推進調査事業費補助金がん対策推進総合研究事業研究班に最新情報を報告する義務を要する。なお、登録情報の不備等に対する修正や更新に関する研究班からの依頼を受けた際には、すみやかに対応する。度重なる登録情報の更新依頼に応じない場合、研究班は、本法を実施する施設が認定施設として不適切であることを日本産科婦人科学会に報告する。」


研究協力医療機関指定申請書については下記よりご確認ください。

研究協力医療機関指定申請書

4. 研究成果(年次報告)

※準備中です。公開までしばらくお待ちください。


5. 研究班のメンバーリスト

研究責任者

鈴木 直 聖マリアンナ医科大学 産婦人科学
      

研究分担者

森重 健一郎 岐阜大学大学院医学系研究科 産科婦人科
髙井 泰 埼玉医科大学総合医療センター 産婦人科
古井 辰郎 岐阜大学大学院医学系研究科 産科婦人科
小野 政徳 東京医科大学 産科婦人科
渡邊 知映 昭和大学 保健医療学部看護学科
湯村 寧 横浜市立大学 附属市民総合医療センター
清水 千佳子 国立国際医療研究センター がん総合診療センター兼乳腺・腫瘍内科
片岡 伸介 名古屋大学 医学部附属病院 小児科
宮地 充 京都府立医科大学 小児科学
山本 哲哉 横浜市立大学大学院 医学研究科脳神経外科
中山 タラント ロバート 慶應義塾大学医学部 整形外科学
中島 貴子 京都大学 次世代医療・iPS細胞治療研究センター
藤井 伸治 岡山大学大学病院 輸血部
菊地 栄次 聖マリアンナ医科大学 腎泌尿器外科学
梶山 広明 名古屋大学大学院医学系研究科 産婦人科学
堀江 昭史 京都大学医学部 婦人科学産科学
      


B. 国の、小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存研究促進事業について

1. 実施主体

国、都道府県、日本産科婦人科学会、日本泌尿器科学会、日本がん・生殖医療学会


2. 事業の対象となる妊孕性温存療法

①胚(受精卵)凍結、②未受精卵子凍結、③卵巣組織凍結、④精子凍結、⑤精子凍結(精巣内精子採取術)

妊孕性/妊孕性温存について

3. 対象者の要件

がん患者等の妊孕性温存治療
  1. 対象者の年齢:
    • 年齢上限は男女ともに43歳未満(凍結保存時)
    • 年齢下限は制限なし
    • 所得制限なし
  2. 対象疾患ならびに対象とする治療内容:
    • 「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年版(日本癌治療学会)」の妊孕性低下リスク分類に示された治療のうち、高・中間・低リスクの治療。
    • 長期間の治療によって卵巣予備能の低下が想定されるがん疾患:乳がん(ホルモン療法)等。
    • 造血幹細胞移植が実施される非がん疾患:再生不良性貧血等。
    • アルキル化剤が投与される非がん疾患:全身性エリテマトーデス等。
  3. 対象者の選定方法:
    • 研究協力施設の生殖医療を専門とする医師および原疾患担当医師により、妊孕性温存療法に伴う影響について評価が行われ、生命予後に与える影響が許容されると認められた方を対象とする。但し、子宮摘出が必要など、本人が妊娠できないことが想定される場合は除く。
    • 対象となる原疾患の治療前を基本とするが、治療中および治療後であっても医学的な必要性がある場合には対象とする。
  4. 説明及び同意:
    • 研究協力施設は対象となる方に「妊孕性温存療法を受けること」および「本補助金に基づく研究への臨床情報等の提供をすること」について説明を行い、本事業に参加することについての同意を得ること。
    • 対象が未成年の方の場合は、できる限り本人も説明を受けた上で、親権者または未成年後見人の同意を得ること。

4.国の研究促進事業における妊孕性温存実施施設の施設認定要件について

本事業は、2021年から開始された厚生労働行政推進調査事業費(がん対策推進総合研究事業)「小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存療法のエビデンス確立を志向した研究―安全性(がん側のアウトカム)と有効性(生殖側のアウトカム)の確立を目指して」研究班が主体となり、日本産科婦人科学会、日本泌尿器科学会、日本がん・生殖医療学会と国と自治体が協力し、地域がん・生殖医療ネットワークの整備されている地域において、妊孕性温存実施設と患者が、日本がん・生殖医療学会の症例登録制度(JOFR)に参加することを条件として、妊孕性温存に対する経済的助成が行われます。なお、患者に対する経済的助成が行われるためには、妊孕性温存実施施設は以下に示す、4つの施設認定(4つのステップ)が必須となります


図:妊孕性温存実施施設の4つの施設認定

※画像をクリックすると拡大します。


STEP1

都道府県のがん等患者の生殖機能温存支援事業実施施設の指定を受ける=図の認定①

注 がん等の治療と生殖医療の連携体制:都道府県でがん・生殖医療の連携ネットワーク体制が構築されていることを要件とされています。STEP1は各自治体の担当部署にお問い合わせください。

地域医療連携

STEP2

本研究班へ研究協力施設*としての認定を受ける(申請書はこちら)=図の認定②

STEP3

日本がん・生殖医療学会(JSFP)の登録制度(新JOFR)に参加施設としての認定を受ける
(各施設の参加者は、臨床倫理研究法に則った倫理講習を受講した上で、JSFPによる東北大学倫理委員会一括審査、または各施設で個別審査を受ける必要があります=図の認定③


日本がん・生殖医療学会 新JOFR参加要件

注 STEP3の手続きはそれぞれの学会のwebサイトでご確認下さい。

STEP4

基幹学会(日本産科婦人科学会または日本泌尿器科学会)が定める施設認定を受ける=図の認定④

日本産科婦人科学会 施設認定要件
日本泌尿器科学会 施設認定要件

注 STEP4の手続きはそれぞれの学会のwebサイトでご確認下さい。


妊孕性温存実施施設(研究協力施設)を探すについては現在工事中です。
公開までしばらくお待ちください。

医療機関(参加施設)を探す


対象となる患者さんへの情報

1. 助成額について

1) 助成対象となる費用

助成の対象となる費用は、妊孕性温存療法および初回の凍結保存に要した医療保険適用外費用です。ただし、入院室料(差額ベッド代等)、食事療養費、文書料などの治療に直接関係のない費用や初回の凍結保存費用を除く凍結保存の維持に係る費用は対象外となります。

2) 助成上限額及び助成回数

治療毎の1回あたりの助成上限額は、表の通りです(自治体独自の助成は含みません)。なお、助成回数は、対象者一人に対して通算2回までとなります。


表:対象となる妊孕性温存療法と、助成上限額及び助成回数

対象の妊孕性温存療法 助成上限額/1回 助成回数
① 胚(受精卵)凍結 35万円 2回まで
② 未受精卵子凍結 20万円 2回まで
③ 卵巣組織凍結 40万円 2回まで(組織採取時に1回、再移植時に1回)
④ 精子凍結 2.5万円 2回まで
⑤ 精子凍結(精巣内精子採取) 35万円 2回まで
           

3) 助成の対象外

本事業の対象となる費用については「不妊に悩む方への特定治療支援事業」に基づく助成を受けている場合、本事業の助成の対象外となります。


2. 助成の申請

本事業による助成を受けようとする対象の方は、妊孕性温存療法研究促進事業申請書(各自治体の様式)および必要書類を添付した上で、妊孕性温存療法に係る費用の支払日の属する年度内に居住地の都道府県に申請してください。ただし、妊孕性温存療法実施後、期間を置かずに原疾患治療を開始する必要があるなど、やむを得ない事情により当該年度内に申請が困難であった場合には、翌年度に申請することができます。


3. 財源負担

国 1/2 、都道府県 1/2


4. 留意事項

1) 本事業は、保険診療と保険外診療を組み合わせて行う保険外併用療法(いわゆる混合診療)を認めるものではありません。保険外診療である妊孕性温存療法を受けた場合の自己負担の一部を助成するものとしています。

2) 本事業の関係者は、患者等に与える精神的影響を考慮して、本事業によって知り得た情報の取扱いについて慎重に配慮するよう留意してください。特に個人情報の取扱いについては、その保護に十分配慮してください。


対象となる患者さんの助成金情報の詳細については自治体にご確認ください。

関連ポスター、チラシのダウンロードは以下になります。

※ダウンロード資材を準備中です。公開までしばらくお待ちください。