妊孕性温存を検討している方へ

がんなどの病気の治療のために妊孕性(にんようせい:精子、卵子など子どもを持つための細胞や機能)が損なわれる可能性がある患者さんに対する妊孕性温存療法(がん治療後に妊娠をする力を保持するための生殖医療の技術)が進歩、普及してきました。しかし、その安全性や有効性は十分にわかっておらず、また国としてこうした医療をどのような体制で提供すべきかの検討も十分にできていません。こうした課題を解決するためには、実際に妊孕性温存治療を試みられた方のデータの蓄積が必要です。


1. この研究について

1) 研究の目的と方法
この研究では妊孕性温存を試みられる方にご協力いただき、10-20年の長期間にわたってがんや妊娠の状況をご報告いただき、データベースを構築します。ご提供いただいたデータは、個人が特定されない形で研究に利用されます。また、毎年データを集計解析し、患者の皆様にも利用できるようにします。
研究にご協力いただいた皆様は、妊孕性の温存や妊娠の試みにかかわる費用について国の助成を受けることができます。
助成を受けるためには、下記にご協力いただく必要があります。
①研究の内容を理解し、参加すること
②患者さんご自身で情報入力や閲覧ができる専用アプリ(愛称「FSリンク」、Fertility & Survivorship Linkage(妊孕性とサバイバーシップのための医療連携)の意)をご自身のスマートフォンやタブレットにダウンロードし、登録すること
③アプリを通して送られてくる質問票にご回答いただくこと
(FSリンク:http://j-sfp.org/fslink/fs.html 参照)

2) 提供いただくデータ

  • 氏名、住所、性別、生年月日(全国がん登録とのデータ連携に必要なため)
  • 電子メールアドレス(持っていない場合は、ご提供戴く必要はありません)
  • 妊孕性温存の有無やその内容、あなたの病気の状態、生殖機能(精子や月経の有無など)、子どもの有無や妊娠・出産経過など

3) プライバシーの保護について
上記の情報をFSリンクに入力いただくと、データは妊孕性温存施設固有のIDとパスワードで保護されたオンライン登録システム(日本がん・生殖医療登録システム、JOFR)に登録され、この研究に参加している他の施設と情報を合わせて集計・解析されます。登録システム上で、生年月日と住所の都道府県を除く個人識別情報はすべて削除され(仮名化といいます)、個人を特定できない状態となります。患者さんが治療施設を受診している期間中、年1回病気や生殖機能などの最新の状況についてのアンケートにご回答いただき、データを更新します。データベースはセキュリティ体制が完備されたクラウドサーバで厳重に管理されます。


2. FSリンク(患者さん用アプリ)

患者さんご自身で情報入力や閲覧ができる 専用のスマートフォン・アプリ(愛称「FSリンク」、Fertility & Survivorship Linkage(妊孕性とサバイバーシップのための医療連携)の意)を使用します。
(FSリンク:http://j-sfp.org/fslink/fs.html 参照)


3. 助成額について

1) 助成対象となる費用
助成の対象となる費用は、妊孕性温存療法および初回の凍結保存に要した医療保険適用外費用です。また、本事業の助成で保存した妊孕性温存検体を使用した生殖補助医療も助成の対象となります。ただし、入院室料(差額ベッド代等)、食事療養費、文書料などの治療に直接関係のない費用や初回の凍結保存費用を除く凍結保存の維持に係る費用は対象外となります。

2) 助成上限額及び助成回数
妊孕性温存に関する治療毎の1回あたりの助成上限額は、表の通りです(自治体独自の助成は含みません)。なお、助成回数は、対象者一人に対して通算2回までとなります。


表:対象となる妊孕性温存療法と、助成上限額及び助成回数

対象の妊孕性温存療法 助成上限額/1回 助成回数
① 胚(受精卵)凍結 35万円 2回まで
② 未受精卵子凍結 20万円 2回まで
③ 卵巣組織凍結 40万円 2回まで(組織採取時に1回、再移植時に1回)
④ 精子凍結 2.5万円 2回まで
⑤ 精子凍結(精巣内精子採取) 35万円 2回まで
           

妊孕性温存後の検体を使用した生殖補助医療に関する治療毎の1回あたりの助成上限額は、表の通りです(自治体独自の助成は含みません)。

対象となる治療 1回あたりの助成上限額
凍結した胚(受精卵)を用いた生殖補助医療 10万円
凍結した未受精卵子を用いた生殖補助医療 25万円(※1)
凍結した卵巣組織再移植後の生殖補助医療 30万円(※1~4)
凍結した精子を用いた生殖補助医療 30万円(※1~4)

※1 以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施する場合は10万円
※2 人工授精を実施する場合は1万円
※3 採卵したが卵が得られない、又は状態の良い卵が得られないため 中止した場合は10万円
※4 卵胞が発達しない、又は排卵終了のため中止した場合及び排卵準備中、体調不良等により治療中止した場合は対象外

注)助成回数:助成回数は、初めて温存後生殖補助医療の助成を受けた際の治療期間の初日における妻の年齢が40歳未満である場合、通算6回(40 歳以上であるときは通算3回)までとします。ただし、助成を受けた後、出産した場合は、住民票と戸籍謄本等で出生に至った事実を確認した上で、これまで受けた助成回数はリセットされます。また、妊娠12週以降に死産に至った場合は、死産届の写し等により確認した上で、これまで受けた助成回数はリセットされます。

3) 助成の申請
本事業による助成を受けようとする対象の方は、妊孕性温存療法研究促進事業申請書(各自治体の様式)および必要書類を添付した上で、妊孕性温存療法に係る費用の支払日の属する年度内に居住地の都道府県に申請してください。ただし、妊孕性温存療法実施後、期間を置かずに原疾患治療を開始する必要があるなど、やむを得ない事情により当該年度内に申請が困難であった場合には、翌年度に申請することができます。


4. 財源負担

国 1/2 、都道府県 1/2


5. 留意事項

本事業は、保険診療と保険外診療を組み合わせて行う保険外併用療法(いわゆる混合診療)を認めるものではありません。保険外診療である妊孕性温存療法を受けた場合の自己負担の一部を助成するものとしています。

リーフレットのダウンロードは以下になります。



(表)

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(裏)

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(裏)

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