代表者挨拶



 2000年前後までは国内外において、若年がん患者に対する妊孕性の問題や温存処置の選択に関して、構造的に検討・議論される公式な場はほとんどない状況でした。2006年に欧州ではドイツを中心にしてFertiPROTECTが、2007年に米国でOncofertility Consortium が組織され、2009年にはヨーロッパを中心にしてISFP(international Society of Fertility Preservation)が設立されました。遅れてではありますが、日本では2012年11月に日本がん・生殖医療研究会(Japan Society of Fertility Preservation、日本がん・生殖医療学会の前身)が、聖マリアンナ医科大学鈴木直教授が中心になって設立されました。

 このような流れの中で当学会のメンバーが中心になって2017年11月には日本がん治療学会から発刊された「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年版」は、この領域の重要な指針となりました。こうした経緯で成立し発展してきた当学会は、小児・AYAがん患者に対する妊孕性温存技術の開発にとどまらず、がんサバイバーシップの中の重要な要素である妊孕性に焦点をあてた「がん・生殖医療」を社会に啓発することと、その問題点の解決に向けて議論し行動することを使命としています。

 当学会の果たすべき当面の課題として①がん・生殖医療技術の研究の促進、②がん告知による不安状態の中で妊孕性喪失の可能性についての説明を受け、決断を迫られる患者をサポートするチーム医療の展開とそのための多職種連携、③がん・生殖医療の登録システムの構築と公的支援体制の導入、さらに④がんサバイバーへの新たな選択肢としての特別養子縁組の推進など、多くの問題が山積しています。これら以外にも当学会の果たすべきこととして、サイコソーシャルケア、遺伝カウンセリング、患者ネットワーク、周産期医療との連携、オンコ・ウイメンズヘルスなど枚挙に暇がありません。

 がんと向き合い妊娠・出産・子育てをしたいと思う若年がん患者をいかに支援できるかが、今後当学会に課せられた役割であると考えます。


 森重 健一郎  鈴木 直

特定非営利活動法人 日本がん・生殖医療学会 理事長
森重 健一郎

一般社団法人 日本がん・生殖医療学会  理事長
鈴木 直





 日本がん・生殖医療学会のホームページのリニューアルに際して、副理事長よりご挨拶申し上げます。去る2020年2月に第10回学術集会を開催させて戴きましたが、その後の大きな変動は医療体制にも少なからぬ影響を及ぼしています。こうした中でも小児・AYA世代がん患者さんに対する医療や支援は継続していかなければならず、患者様ご本人はもとより、様々な制約の中で尽力されているご家族、医療者や関係者の皆様に心からの御見舞いを申し上げます。

 2018年3月に第3期がん対策推進基本計画が閣議決定され、小児・AYA世代がん患者さんに対する生殖機能障害および妊孕性温存に関する情報提供、意思決定支援体制整備などが重要な課題とされており、第10回学術集会では「がん・生殖医療の量的・質的均てん化を目指して」をテーマとしました。がん・生殖医療の均てん化には、がん・生殖医療に関するスキルを有する医師、看護師、薬剤師、心理師、遺伝カウンセラー、がん専門相談員、教育や福祉に携わる皆様、ピアサポーターなど、多様な方々による医療連携が不可欠です。そのため、本会では全ての職種を対象とした「認定がん・生殖医療ナビゲーター制度」を発足させました。

 また、地方自治体レベルで広がりつつある、公的助成制度を全国展開していくことは、がん・生殖医療の均てん化にとって不可欠だと思いますが、これを推進するためにも、地域医療連携や症例登録・評価制度が重要であり、これを定着させるために本会が果たす役割は大きいと自負しております。

 私見ではありますが、現在のがん・生殖医療は卵子・精子等の凍結技術や生殖医療の普及を礎に発展してきました。これからは図に示しますように、適正かつ公正な全国レベルでの公的助成を基盤として、患者さんへのカウンセリング体制や長期フォローアップ・支援体制を充実させ、患者さんが子どもを持つことのみならず「子どもをもつことの趣意を見つめなおす」(本会顧問・吉村泰典慶應義塾大名誉教授による)、がん・生殖医療提供体制を目指していきたいと思います。


 髙井 泰

特定非営利活動法人 日本がん・生殖医療学会 副理事長
髙井 泰


髙井 泰