三重県
三重がん生殖医療ネットワーク設立について
三重大学医学部産科婦人科 前沢 忠志
三重大学病院は三重県のがんを扱う中核施設のため、多くの若年がん患者を診ており、妊孕性温存の要望も度々ありました。平成27年より精子凍結と胚凍結を開始しました。平成29年1月に日本産科婦人科学会の認可を受けた未受精卵子凍結も開始しました。三重県に妊孕性温存療法を普及させるには大学内だけの取り組みでは限界があり、平成29年3月24日に大学内の産婦人科、腫瘍内科、乳腺外科、小児科、血液内科、看護師、薬剤師、臨床心理士等のメンバーを招集し、三重がん生殖医療ネットワークを設立しました。第1回のミーティングでは、三重大学内から三重県内へ広げていく啓発活動の方向性、今後のネットワークの在り方などを話し合いました。同年8月には、卵巣凍結が学会より認可されました。三重県内のネットワーク拡大のため、10月5日に鈴木直先生を招いて、「がんと生殖に関する最近の話題~小児、思春期・若年がん患者のがんサバイバーシップ向上を志向して~」と題したご講演を賜りました。92名もの出席者があり、三重県内でも妊孕性温存療法への意識の高さを再確認し、有意義な会となりました。
現在、三重県内の医療従事者に妊孕性温存療法について広く知ってもらうために、がんを診療する各関連病院で、大学病院の生殖医療医が講演会を実施しています。各々の講演会前後にアンケートを実施し、講演前の妊孕性温存についての認識、講演会による意識の変化を調査し、今後の啓発活動に繋げています。
当院では、妊孕性温存を行うがん患者へのカウンセリングを重視しており、臨床心理士、がん化学療法認定看護師、不妊症認定看護師がすべての妊孕性温存療法中の患者に行っています。面談の中で、妊孕性温存についてだけでなく、抗がん剤の副作用、経済的不安を表出されることも多く、がん患者様の多面的な心の葛藤を改めて知りました。
三重県では、ネットワークの輪をさらに広げ、多くの若年がん患者様への心理的サポート、がん妊孕性温存療法、治療後の妊娠・出産におけるサポートを取り組んでまいります。