兵庫県

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「兵庫県がん・生殖医療ネットワーク」兵庫県モデル


「兵庫県がん・生殖医療ネットワーク」について

代表世話人 柴原 浩章

 がんの罹患率は近年増加傾向にありますが、悪性腫瘍に対する診断法や集学的治療法の進歩により、がん患者の生存率は飛躍的に向上し、たいへん喜ばしいことに多くのがん患者が病を克服できる時代になりました。
 ところで女性のがんの10%程度は、45歳以下で発症しています。従ってがんに対する治療法の進歩で病は克服できますが、骨盤腔への放射線療法や、卵巣毒性の強い抗がん剤による治療による影響で、卵巣機能が低下して妊孕性が消失する場合のあることが知られています。
 そこでがん治療を行う前に、妊孕性温存法を考慮することが一般的になってきました。このうち卵子や胚の凍結保存法は、既に不妊治療で広く行われている体外受精の技術を利用します。また最近では卵巣組織の凍結保存という方法も注目されています。
 がんを宣告された方々に対し、限られた時間内で正確な情報を提供する必要性があります。そこでがん治療チームと、妊孕性温存を担当する生殖医療チームの密接かつ迅速な連携が必要とされ、兵庫県でも平成28年1月に「兵庫県がん・生殖医療ネットワーク」を開設しました。
  平成28年には43名の若年がん女性にカウンセリングを実施しましたが、このうち県内から39名、県外から4名でした。年齢は17~46歳でした。原疾患は乳がんが20名で最も多く、続いて悪性リンパ腫6名、卵巣がん6名、白血病2名、直腸がん2名、その他のがん7名でした。
  カウンセリング後に妊孕性温存を希望された方は34名 (79.1%)でした。このうち卵子凍結希望者は19名で、14名に凍結可能でしたが、化学療法後の2名と高年齢(44~46歳)の3名の方々は、残念ながら卵子を回収できませんでした。受精卵凍結希望者は15名で、全員で凍結できました。2017年に入ってから、6名の方に卵巣凍結を実施しました。
  一方、若年がん男性に対する精子凍結につきましても、泌尿器科医と連携し、本ネットワークでカウンセリングや凍結を実施していくシステム作りを進めています。

参考文献
1. 柴原浩章、他:若年がん女性に対する医学的適応による妊孕性温存の現状と課題.
産婦人科の実際66: 915-921, 2017.
2. Wakimoto Yu, et al.:Fertility preservation for adolescent and young adult women in Hyogo College of Medicine College Hospital. Acta Med. Hyogo 42: 101-107, 2017.



「兵庫県がん・生殖医療ネットワーク」の利用方法

兵庫県がん・生殖医療ネットワーク事務局
幹事長 脇本 裕

兵庫県がん・生殖医療ネットワークでは、実際の運用を平成28年3月1日より行っています。


御利用の際は原疾患の主治医の先生に『兵庫医科大学病院「妊孕性温存」相談申込書』に必要事項を記入のうえ、地域医療・総合相談センター宛にファクス(FAX : 0798-45-6002)してもらってください。


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  • 「兵庫県がん・生殖医療ネットワーク」生殖医療側受け入れ施設一覧


JSFP がん・生殖医療連携会議およびOncofertility Consortium JAPAN 2016 準備会議〈2016年7月30日〜31日〉

※クリックで演題がご覧いただけます。
『兵庫県がん・生殖医療ネットワークの運営状況』
兵庫医科大学 産科婦人科学講座 兵庫医科大学病院 生殖医療センター 脇本 裕先生
兵庫医科大学 産科婦人科学講座 兵庫医科大学病院 生殖医療センター 長谷川 昭子先生
兵庫医科大学 産科婦人科学講座 兵庫医科大学病院 生殖医療センター 松本 豊美先生
兵庫医科大学 産科婦人科学講座 兵庫医科大学病院 生殖医療センター 柴原 浩章先生
英ウイメンズクリニック 岡本 恵理先生
英ウイメンズクリニック 塩谷 雅英先生
兵庫県立がんセンター婦人科 山口 聡先生
神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科 吉岡 信也先生
関西ろうさい病院産婦人科 伊藤 公彦先生
神戸大学産科婦人科 蝦名 康彦先生
なでしこレディースホスピタル 大橋 正伸先生



がん・生殖医療ネットワーク「兵庫モデル構築」によせて

塩谷 雅英

 兵庫県下では、これまで各生殖医療施設が独自に院内、あるいは近隣のがん治療施設と連携して未受精卵子・精子・受精卵の凍結を行ってきました。しかし、それでは連携のないがん治療施設の患者さんが妊孕性の温存についてカウンセリングをうける機会のないまま妊孕性を損失してしまう可能性があるため、がん患者に妊孕性温存法に関する十分な情報提供を行い、カウンセリングの機会を提供し、さらにはがん治療医と生殖医療専門医との連携・情報交換をスムーズに行うことを目標に、2015年4月、兵庫医科大学産科婦人科学教室柴原浩章教授より、兵庫県がん・生殖医療ネットワーク発足につきご提案がありました。これは神戸新聞に掲載されました。
 6月7日に開催された第89回兵庫県産科婦人科学会総会ならびに学術集会にて、兵庫医科大学産科婦人科学教室脇本裕先生より、岐阜モデルを参考にして兵庫県でも同様のネットワークを構築する必要性を提言していただきました。 その後、兵庫県産科婦人科学会理事会にて兵庫医科大学柴原教授より兵庫県がん・生殖医療ネットワーク設立につきご提案をしていただき、全会一致で採択されました。 現在、県内の生殖補助医療登録31施設に対し、医学的適応の卵子・胚・卵巣の凍結保存を実施する希望の有無をアンケート調査しており、今年度内にネットワークの完成と、兵庫県がん・生殖医療研究会の設立・第1回の講演会開催を目標にしています。

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